掲示板の前で、ただ立ち尽くす
病院の外来で、いつものように順番を待っていたときのこと。ふと掲示板に目をやると、一枚のパンフレットが目に入った。
「産科医療補償制度」
優しいブルーの紙に、やさしいイラストが描かれていた。それは、なんでもない日常の中の、なんでもない紙切れのはずだった。
だけどそのとき、なぜか足が止まった。
「なにかに呼ばれている」
そんな感覚に包まれて、しばらくその場から動けなかった。気づいたら、パンフレットを手に取っていた。内容なんて、まだ読んでもいないのに――不思議と、目が離せなかった。
「関係ない」なんて言い切れない気がして
パンフレットを見つめながらスマホで制度名を検索してみた。
- 「対象になるのは、脳性麻痺のあるお子さん」
- 「一定の条件を満たしていれば補償金が支払われる」
- 「出産時の異常や分娩状況も審査のポイントになる」
言葉のひとつひとつが、まだ曖昧でよく分からない。それでも、「うちには関係ない」とは、どうしても思えなかった。
小さなきっかけだったけれど、私はその日から、この制度のことを調べ始めた。
* * *
頼れるのは、家族だった

姉に頼る
調べ始めたはいいけど、出てくるのは法律用語や医療用語ばかり。読めば読むほど、頭の中はごちゃごちゃになっていった。
こんな時頼りになるのは姉。
「このパンフレット、ちょっと見てみてほしい」
と、写真を送ると、姉はすぐに動いてくれた。
制度の公式サイトを見て、難しい文書を読み解いて、要点をわかりやすくメモにしてくれて――
「脳性麻痺かどうかってことがポイントになりそうだね」
そうやって、一緒に見つけてくれた。
「後悔しないようにやってみよう」
姉は、さらにこう言ってくれた。
「⑨のためになることなら、何でもやってみよう」
「あとから”やっておけばよかった”って思いたくないしね」
わたしは、その言葉に救われた。
自分のことだけなら、たぶん一歩を踏み出せなかった。でも「一緒に調べるよ」「大丈夫」と言ってくれる誰かがいると、不思議と、少しだけ勇気が出る。
制度の内容は難しいし、該当するかも分からない。それでも、今わたしができることを、少しずつやってみようと思った。
* * *
「気になってるなら、やってみたら?」
夫の反応
夫は、わたしほど強くは言わないけれど、
「気になってるんでしょ?やってみたら?」
と言ってくれた。
いつも中立で、どっちつかずなところもあるけれど(笑)「やめときなよ」と言われるより、ずっとありがたい。
ほんの小さな一歩から
制度の申請は、すぐにできるものじゃないし、「申請したからといって、結果が出るとは限らない」とも書いてあった。
それでも、パンフレットを見て足が止まったあの日から、わたしの気持ちは、ゆっくりと動き始めていた。
「関係ない」と思い込まずに、「知ってみること」を始めてみた。
それが、私にとっての第一歩だった。
このブログを読んでくれている誰かが、もしあのときの私のように迷っていたら――
「気になっているなら、まずは知ってみる」
そうすることで、未来が少し変わるかも。そう思います。