産科医療補償制度への申請を決意したとき、私の心に浮かんだのは一人目の主治医の顔でした。信頼している先生だからこそ、隠し事はしたくない。たとえ反対されても、私の気持ちをちゃんと伝えたい。そんな想いを胸に、再び先生のもとを訪れたときのお話です。
決意を胸に、再び先生のもとへ
産科医療補償制度への挑戦を決めた瞬間
2月中旬、別の主治医から「将来的に脳性麻痺の診断がつく可能性もゼロではない」と言ってもらえたあの日。
私の中で、何かがはっきりと決まった。
産科医療補償制度に、チャレンジしてみよう。
一人目の主治医への想い
でも、そうと決めたとき、頭に浮かんだのは一人目の主治医の顔だった。
2月初旬、初めて制度のことを相談したとき、先生は「産後のトラブルはなかった」「遺伝的な要因が考えられる」として、制度には該当しないと説明してくれた。
あのときは確認ベースだったから、それで納得していた。
でも今回は違う。
二人目の主治医に話を聞きに行った私は、その先生のセカンドオピニオンを元に申請に踏み切ろうとしている。
それは一人目の主治医が言ったことに、異なる判断をすることになる。
大事な先生に、隠し事はしたくなかった。
たとえ再び反対されても、私の決意をちゃんと伝えたかった。
怖かったけれど、向き合いたかった
外来に向かう途中の不安
3月初旬、予約を取って外来に向かう途中、心臓がばくばくしていた。
「嫌われたらどうしよう」「もう診てもらえなくなったらどうしよう」そんな不安が頭の中でぐるぐるしていた。
信頼する先生だからこそ
でも、やっぱりこの先生には正直な気持ちで向き合いたかった。
息子のことを一番に考えてくれている先生だから。
遺伝的な原因を疑って、ずっと様々な検査をしてくれている先生だから。
長年、信頼している先生だからこそ、隠し事はしたくなかった。
診察室のドアの前で深呼吸をして、私は覚悟を決めた。
厳しい言葉の向こうにある温かさ
私の決意を伝える
「先生、この前はありがとうございました。今日は、どうしても伝えておきたいことがあって来ました」
私は、ゆっくりと話し始めました。
別の主治医から「将来的に脳性麻痺の診断がつく可能性もゼロではない」と言ってもらえたこと。
そして、産科医療補償制度に申請してみようと決めたこと。
言葉を詰まらせながらも、なんとか私の気持ちを伝えました。
先生からの厳しい返答
先生の返事は、やはり厳しいものでした。
「僕は協力できません」
「出産時にトラブルがなかったなら、産科医療補償制度の対象にはあてはまらない」
「こういう申請が増えると、産院が大変になる」
「申請するのは、だますような気がしてしまう」
先生の口から重ねて発される否定の言葉に頭が真っ白になった。
最後の言葉は、特に胸に刺さった。
救いの言葉
でも、先生はそのあとにこう続けてくれた。
「でも、お母さんもつらいよね」
「伝えてくれてありがとう」
その言葉に、私は救われた。
協力は得られなかった。先生の考えも変わらなかった。
でも「嫌われた」とは感じなかった。
むしろ、私の気持ちを受け止めてくれた先生に、改めて感謝の気持ちが湧いてきた。
そして私も、自分に胸を張ることができた。
逃げなかった。伝えた。息子のために、私はやれることをやった。
この一歩は小さなものかもしれない。でも私の中では、とても大きな意味を持つ一歩だった。
大切な先生との信頼関係を守りながら、母親として自分の信念を貫くことができた。
それが何より嬉しかった。

誠実さが紡ぐ信頼関係
この経験から学んだこと
先生からの協力は得られなかったが、この経験を通して学んだこと。
主治医には、たとえ反対されても正直でいたい。
そんな気持ちが、最終的には相手にも伝わるのだと・・・
先生の「伝えてくれてありがとう」という言葉は、お互いの信頼関係が変わらないことを教えてくれた。
意見は違っても、お互いを尊重し合える関係でいられる。
それが何より大切なのかもしれません。
同じ悩みを持つお母さんへ
同じような状況で悩んでいるお母さんがいたら、伝えたいことがあります。
あなたの気持ちは間違っていない。
子どものために行動したいと思う気持ちも、主治医に正直でいたいと思う気持ちも、どちらも大切なものです。
勇気を出して一歩踏み出すこと。
それが、きっと新しい道を開いてくれるはず。
次回は、実際の申請手続きに向けて準備を始めた体験をお話しします。書類作成の不安と、それでも前に進む決意について綴ります。